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2012/10/20

みんなのてつがく「夕方について」

こんにちは、まつかわです。
10月17日(水)は、中之島哲学コレージュで哲学カフェの進行をつとめてまいりました。

コレージュで開催する哲学カフェは、いつも事前に進行役がテーマを用意してHPやチラシでお知らせしているのですが、今回は、「みんなのてつがく」と題して、当日参加者のみなさんから募ることにしました。提案された複数のテーマからどうやって一つのテーマを選びだすか、当日まで迷いましたが、カフェマスター本間さんのアドバイスもあり、本場フランスの哲学カフェと同じように、進行役が独断で「えい」と決めてしまうことにしました。

果たしてどんなテーマになるのか?
ドキドキしながら会場のアートエリアB1に向かうと・・・

 

鉄道芸術祭vol.2開催中で、いつものスペースが駅のホームに!
階段状の席もありますが、それだと対話しにくいので、早めに到着した参加者と相談して駅のホームの上に席を並べることにしました。(対話中の写真を本間さんに撮ってもらったのですが、データをもらうの忘れちゃいました。また、後日掲載します)

「生きやすい・過ごしやすい社会とはどのような社会か?」、「ロマンってなんだろう」、「自己決定」など、8つほどのテーマが提案されました。どのテーマも惹かれましたが、そのなかで、ひとつだけ、私が全く考えたことがないテーマがありました。「夕方について」です。
はじまるまえに「せっかくだから、自分では思いつかないテーマがあったらそれを選ぼう」と決めていたので、思い切ってこのテーマを選びました。でも、いくら「自分では思いつかないテーマを」と決めていたとはいえ、ひとりだったらこのテーマを選ぶ勇気はなかったと思う。このテーマが提案されたときの、参加者のみなさんのどよめきが、このテーマを選ぶ勇気をくれました。進行役の独断だけど、ひとりで決めたわけでもない。事前にひとりでテーマを考えるのとはちがう手応えがありました。遅れてやってきた方は「どうしてこのテーマに!?」と驚いていましたが・・・(選んだ私だってびっくりししたし、テーマを提案した人も選ばれてびっくりしていました)。

いざ話しだすと、これでもかというくらい様々な方向からたくさんの言葉が紡がれました。

夕暮れをみれるとうれいしい、一日が終わって残念だ、空の様子に関わらず「夕方」といえば5時〜6時ぐらいのことだと思う、「夕方」は時間か現象か、日の出とともに起き日の入りとともに眠る生活、体内時計の夕方、時間には客観的時間だけでなく動物としての時間があるのでは、白夜は一日中夕方か、海王星にも夕方はあるのか、人生の夕暮れ、文学のなかの夕方、秋の夕方はなぜ特別なのか、太陽の光のありがたさ、明の明星と宵の明星はなぜちがってみえるのか、朝日と夕焼けのちがい、夕方になると頭が冴えるのはなぜか、家でお母さんが晩ご飯を用意して待っているという安心感、昼と夜の狭間、仕事とプライベートのあいだ、昼間の太陽は近寄り難いが夕陽に感じる親しみやすさ、犯罪が夕方に多いのはなぜか、お茶を飲んで一息つく時間・・・
(※私の頼りない記憶に頼っているので、実際に対話ででてきた発言の順番とは異なります)

みなさんの発言を聴きながら、私も何か言おうと何度かチャレンジしましたが、みなさんの話を聴くので精一杯。進行役としてできたことといえば、本当に、テーマを決めて、開始/休憩/終わりの時間を告げたことぐらいだったとおもいます。自分のなかにある夕方の記憶やイメージ、それをつくった原体験にめまぐるしく思いを馳せていました。大学からの帰りに阪大坂からみた夕焼け、平日夜に哲学カフェの前にみる夕焼け、夕飯の準備をしなきゃと焦る気持ち、冬の4時すぎに突然暗くなったときの心細さ、長い影、書斎にはいる西日の強さ、太陽の光をあびてほっとする気持ち・・・自分のなかにある夕方のイメージは、ある印象的な体験からくるのか、自分の生活のサイクルに依存しているのかどっちだろう、なんて考えていました。

夕方について、その場に集まったひとたちと2時間語り合う。そのことにどんな意義があるのかときかれたら、私もうまく答えられません。
でも、2時間のあいだ、ただただ私は、みなさんの言葉を聴くことだけに集中して楽しむことができました。はじめて出会った人を前にして、相手が何歳ぐらいでどんな職業の人か、何に関心があるか、どんなことをどれくらい知っているのか、相手が私のことをどう思っているか・・・そういうことを一切気にすることなく、ひたすら、相手の言葉とその意味にだけ集中する。それって、とても貴重な体験なのかもしれない。いつもは「これはみんなの話し合う意義のあるテーマにちがいない」なんて思いながらやってるからそういう基本的なことに気づきにくいけれど。

他のテーマを提案してボツにされてしまった方も、テーマを提案してくださったとき以上に、「夕方について」生き生きと語ってくださってほっとしました。
また、機会があれば、「みんなのてつがく」開催したいと思います。

大雨警報、洪水警報が出るなか、会場にお越し下さったみなさん、ありがとうございました。