「あなたにとって豊かさとはなんですか」 てつがくカフェ@かわさき市民アカデミー
こんにちは、廣井です。
11月18日(日)に実施した川崎初の哲学カフェを報告します。
今回の会場かわさき市民アカデミーは、知的好奇心旺盛な主にリタイアした方々が大勢通う市民のための生涯学習センターです。
場所柄、上は88歳から下は20代と幅広い年代の方々にご参加いただきました。
進行役は村瀬智之さんです。
参加者はおもに60代以上のシニア世代と20~30代の若者世代とに二分され、40~50代の現役世代はごく少数という構成でした。
まずは自分にとっての豊かさについて自由に話していただきました。シニアの方の第一声は「健康」。他には「自分の豊かさは家族や社会に支えられている」「自然の一部として生きている以上、子孫が続いていくこと」「喜びを分かち合える人がいること」など、家族や社会とのつながりやコミュニケーションを重視する意見が多く出されました。
途中、出生前診断はダウン症の子どもを切り捨てるようなものであり、そのような医療は決して社会を豊かにするものではないのではないか、との問題提起がありました。
ダウン症の子どもを育てるには苦労も伴うが、それ以上の豊かな人生を送らせてもらっていると話す親がいる一方で、世間では「大変だ」「可哀そう」という見方が多い。そのことから、自分が感じる豊かさと他人が見る豊かさとは違うのではないかとの意見が出されました。
後半は、前半はシニアに押され気味だった世代も積極的に発言し、「精神的な豊かさ」を中心とした対話が続きました。
「しかし、それには経済性が前提」と現役世代からの意見。「非正規雇用など不安定な状況においては精神的な豊かさよりもまずは経済的に安定することが先なのでは」と現実的な問題が出されました。20~30代からは「豊かとは余裕のあること」「選択肢が多いこと」「豊かさを得るためには強さが必要」など、経済的に豊かなシニア世代を目の前にしての率直な意見も飛び出しました。
また、「消費する豊かさ」「生産する豊かさ」というユニークな分類を提示してくれた方も。
途中から、「豊かさ」と「幸せ」がほぼ同意語として使われている方が多かったため、最後は「豊かであること」と「幸せであること」について考え、「豊かさは比較できるが、幸せは比較できない」「豊かさを経由して幸せに到達する」などの意見が出たところでお開きとなりました。
印象としては、「豊かで元気なリタイア世代」と「心優しき若者たち」の対比が鮮明で、「若者ガンバレ!」と心の中で叫ばずにはいられませんでした。しかし、今回のような対話を重ねることによって世代間の隔たりも少しずつ解消されていくのでは、とほのかな期待も生まれた哲学カフェでした。