早く報告しないといけないなと2ヶ月忘れずにいたのですが、
報告しようと思っていたことはすっかり忘れてしまいました。
9月5日、さする庵、スタッフあわせて13名ほど。こじんまりと開催できました。参加者のみなさま、ありがとうございました。
記憶にあるのは紹介者の高山さんが神谷美恵子さんの詩「らいの人に」の一節を読んだ声でしょうか。こういう詩です。
なぜ私たちではなくあなたが
あなたは代わって下さったのだ
代って人としてあらゆるものを奪われ
地獄の責苦を悩みぬいてくださったのだ
長島愛生園での出会い、その後のかかわり、若者の気負い。キリスト教とも浅からぬ関わりのある方ですが、キリストが重ねられているようにも私には思えました。生きがい、苦悩、生きることの意味を「愛へのかわき」「使命感」といった言葉で論じ、あるいは説いていく真摯な眼差しに、今回の参加者に突き刺さる何かと戸惑わせる何かが同居しているような感じがあったような記憶もうっすらあります。「死の話が出なかったですね」という参加者の指摘も、その辺りに関わっていたのかもしれません。
さて、テツドクでは「興味がわいたら実際に本を借りたり買ったり手にとってみてくださいね」と毎度アナウンスしています。今回私が手に取ったのは長島愛生園での出来事を中心に編纂された同著者の「島日記」。日常のたわいもないつぶやきもあるのですが、たとえば親近感を覚えるこんな記録。
5月28日 神戸女学院大学で英語やフランス語を教えている自分が道化のようだ。今年の非常勤の契約をするとき自分の首をしめている感じだったが、お金のためにはやむをえない。しかし、いつまでもつづけるべきではないと思う。
6月19日 午後九時半から准看護学院で精神科の講義。(中略)熱心な少女に教えるのはたのしい。女子大生に教えるよりも。」
職業がらふかくうなずくところです。
医師としての生々しい記録もあります。
1963年3月3日 久しぶりで島へ。・・・M・Sさんを往診。深刻な罪障感と被害妄想。「殺してくれ、殺してくれ」と叫んでいる(中略)イソミタール0.2、クロールプロマジン50ミリを2回筋注しても利かず、結局後者100ミリでやっとおさまる。なんという苦悶。なんという絶望。
日記は1970年春頃から途絶えますが、その理由の幾つかが後書きに記されている。
この年の初めに起こった突発的な事件(患者間の殺人事件)は5病棟全体を、私をふくめて大きくゆさぶった。その間接的な結果として私の健康は徹底的に損なわれたが・・・
もし参加者のみなさまの中にもその後本を手に取られ、感想などありましたら、コメントなど頂けるとうれしいです。
さて、次回は11月24日(木)です。浜田寿美男さんの著書『身体から表象へ』を玉地雅浩さんに紹介して頂きます。さすがにもう台風はこないでしょうか。乞、ご期待!