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2013/08/26

ミルトーク「憧れと模倣」〜オリエント美術館特別展「古代ガラス」を観て語る〜

こんにちは、まつかわです。
昨日は岡山オリエント美術館にて、ミルトークを開催しました。

ミルトークとは、アート作品をみて、感じたこと考えたことを話し合う。
いわば哲学カフェのアートバージョンです。




何度かミルトークを開催したことはありますが、これまで取り上げてきたのは現代アートばかり。
現代アートの作品なら、なんの説明もなしに、作品をみていきなり感想を語り合えばいい。
しかし、この美術館で展示されているのは古代美術。ちょっぴり知識が必要です。
そこで、最初に、主任学芸員の須藤寛史さんに説明をしていただきながら、作品を鑑賞することにしました。

全ての作品について語り合う時間はできないので、特別展「古代ガラス〜色彩の饗宴」のなかから、ラピスラズリやトルコ石などに憧れてつくられた青いガラスと、大理石に憧れてつくられた「マーブルガラス」などに絞って鑑賞していきます。

貴石について説明してくださる須藤さん

スパイラルガラスの復元映像を観ながら
こうして、作品を鑑賞したあと、別室に移動し、お茶をいただきながら作品の感想を語り合いました。

展示室ではゆっくり話せないので、別室へ。
さきほど観た作品の写真を印刷しておきました。

最初に話題にあがったのは、古代の人々はなぜ青い石に憧れたのだろう、なぜ大理石に憧れたのだろう、という疑問。
私は、ラピスラズリや大理石が稀少な石だからかなと思っていたのですが、参加者からは、「青は空や海など自然にある色だからではないか」「大理石の模様には、時間が織り込まれているからでは」といった興味深い意見がでてきました。
そこから、ラピスラズリのような青が人に与える印象や、石やガラスが出来上がるまでにかかる時間の貴さなど、作品がもつ色や質感からくる印象についての言及。

それから、今回テーマに選んだ「憧れと模倣」の関係について。
小さいころ何に憧れたか、憧れのものを模倣するときの「近づきたい」という気持ち、模倣なしに物をつくることは可能か、さきほどみたガラス作品は宝石の「にせもの」なのか、それとも宝石とは別の価値をもつのか、新しい価値はどうやって生まれるのか・・・といった論点について意見が交わされました。

特に盛り上がったのは、大理石に憧れてつくられた「マーブルガラス」と、そこから発展した「スパイラルレースガラス」とのギャップについてでしょうか。

アラバスター文長頸瓶
伝イラン出土 前1世紀後半1世紀
岡山市立オリエント美術館蔵







これは確かに大理石の模倣をしたものだけど・・・

スパイラルレースガラス碗
東地中海地域 伝クレタ島出土 前2世紀 大英博物館蔵
©The Trustees of the British Museum

これは、果たして???

「もはやマーブルの痕跡がない」
「模倣ではない」
「まったく別の新しい価値がある」

etc...





自然がつくりだした貴石への憧れから、最終的に、創造することへの憧れ、創造主としての神へ憧れという話題にまで展開しました。
まさか、神という話題についてこんなに盛り上がるとは思っていなかったので、びっくりしました。

誰かの発言をきくたびに、作品のみえ方も変わるような気がして、打合せ時にひとりで鑑賞したのとは全くちがう楽しさがありました。

最後に、せっかくだからともう一度展示室にもどって、先ほど素通りした残りの作品についても、須藤さんに解説していただきながら鑑賞しました。
ここまでしてくださるなんて、本当にホスピタリティあふれる美術館です。

解散の後、岡山大学の岩淵さんと「いい美術館だし、またやろうよ」と、意気投合。
早速、須藤さんと次のコラボ企画について相談して帰ってきました。
こちらは、じっくり準備して、来年実現予定です。お楽しみに。


来月は、通常通り、岡山大学のまちなかキャンパスにて哲学カフェを行います。
9月22日(日)13:00より、テーマは「家族サービス」です。
詳しくは、こちらをご覧ください。